キズものになった体

顔はやめな、ボディだよ

現在身を寄せている家はコロナ禍前に親が購入した中古住宅。
まずは購入した親が入居。
そして、これまで賃貸でずっと我慢していた「犬を飼いたい」という母の気持ちが爆発し、すぐに柴犬♂が家族に。
それから数カ月後、帰国して初めて足を踏み入れた私。

母は溺愛し、生物学的には私が長女だけど、♂を「長男が…」なんて言う始末。
もともと小さい頃は犬を飼っていたし、私も「犬を飼おう」と提言するところだったので、帰国して家に入るなり対面して大感激だったくらい。

ところが、時どきこう下に見られている感があるというか。
毎日食事を与えたり散歩に行っているのは母なので、母に懐くのは分かるけど、母には上、私には下なんて目線に傾きがあるのはおかしいでしょなんて思っていた。

それでも帰国している間で計3年くらいは一緒に暮らしたかしら。

最近、そんな♂がどうも不機嫌なことが多い。
その矛先は全員に向かっていて、決まって不機嫌モードが発動するのは食事の後。
ただ母にだけは吠えていても怒りより甘えとも見受けられる雰囲気。
その時を除けば愛くるしい長男なので、いつも通り当たり障りのない“犬のいる暮らし”をしていた。

そんなある日のこと。親は出かけていて、私は♂と居間でくつろいでいた。
私は書斎に行こうと思い、その前に「ちょっと行くわ」のつもりで♂の顔を撫でた。
穏やかにしている感じだったので、顔を覗き込んだその瞬間、凶暴化したヤツが私の口の横をめがけてガブッ、慌てて右手で防御したらその手首にも牙を向いた。

ティッシュで押さえ洗面所に行き水で洗うと排水溝に流れる大量の血。
恐る恐る鏡で見ると、口の横におちょぼ口のように開いた傷跡、赤々しい血。
か、顔がぁっ~!

ヤツ♂は私の動きから何かマズい事が起きたと察したのか、急にじゃれるようについてきたけど、それどころじゃないのよ。

血が大の苦手なのでそれを見たら怖くてもう洗えず、右手首も血が出ていたので急いで軽く洗い、震える手で母に電話。
車を持って外出していたので、救急外来に乗って行こうと思い、帰宅時間を聞こうとしたのだ。
すると聞き覚えのある呼び出し音が居間の方から聞こえてきた。
「え、携帯置いて出かけたの⁉」

とりあえず頬を押さえ、痛む右手首に唸りながら、救急外来の受付に駆け込んだ。
その頃には強く押さえ過ぎたのか口横の血はほぼ止まり、アドレナリンが薄れたのか傷口にジンジンとした痛みを強く感じ始めていた。

以外にも30分程度で名前を呼ばれ、診察室で事情を話すと医者は特に何もせず帰そうとした。
ただの切り傷なら血が止まっていれば私もそれでいいと思うけど、動物咬傷を無治療は怖すぎる。
「あの、実は仔犬の頃に家族(母)も噛まれたことがあって、その時もこちらで、消毒・破傷風ワクチン・抗生物質3日間と聞いたのですが、今回は同じ成犬でそれしなくて大丈夫でしょうか」
とさすがに不安過ぎて質問してみた。

すると別室に行った先生が洗浄液とワクチンセットを持って戻り、さっき質問した内容がすべて処置されるという展開。
専門家に立てつく気はないけれど、インターネットのみならず、翌日改めて行った別の整形外科、形成外科の先生、そして医療事務員をする妹、看護師の幼馴染、みんなに
「最初は洗いもせず『帰っていいですよ』って言われた」
と言うと揃って首を傾げたり驚いたりだったので、やはり言って良かったと実感。

時間が経つにつれて、痛さよりも顔に傷を負ったということがメンタルに来始めた。

嫁入り前なのに

ちょうど年末年始の宴の話をやりとりしていた友達から連絡が入ったので、しばらく返信が遅れた旨(↑)を送ると
「まだ嫁入り前なのに」
と一言。
その後に心配の言葉が続いたけれど、張りつめていた気分が少し和らいだかも。
そんな言葉をかけられる年齢はとっくに過ぎているからね。

キズものになったのね

同じく宴のやり取りをしていたもう一人の友達にも同様に説明すると
「キズものになったのね」
と一言。

みんなウマいな。

鏡を見る度に落ち込む。
別に褒められた顔でも無いけれど、やはり顔に目立つ傷ができてしまうのが平気な人なんていないはず。

昔はかさぶたが治癒の象徴だったと思うのだけど、近年は完治まで乾燥をさせないようにするのが主流らしい。傷を負っている皮膚に乾燥や日焼を許すと、それが色素沈着を招き傷跡が残りやすいのだとか。

起きてしまったものは仕方ない。
事後に取り繕うようにすがってきた愛犬の目も忘れられないし、これで嫌いなんて気持ちは1㎜さえないし。
これが夏だったら化膿したり日焼け対策もあってもっと大変だったはず。
せめて冬だったのは不幸中の幸いか。