メキシコへ旅立つ:「入国拒否の可能性があります」(1)

とうとう出発当日

退職をしてから屋久島に行ったり、イタリアで親友達に会ったり、金沢や東京で親友達に会ったり…半年経った2013年の2月末、いよいよ渡墨の時が来ました。

一番辛かったのは家族との別れ。
妹は、身内が亡くなっても泣かないけれど、飼い犬が亡くなると号泣すると言う、変わったスイッチがある人なので普通に「じゃぁね」で終わり。
姪っ子はあまり理解していないような…5年経った今は“遠い国に住んでる”とは理解しているみたい。

母親とが一番キツかったなぁ。
大学時代から1人暮らしをして一年に一回帰る程度だったから、会う頻度としては変わらないだろうけれど、やはり新幹線ですぐ帰れる距離ではないわけで。

でも「『親が悲しむから、興味のあることを諦めた』はしてほしくない」とオカンには言われていたし、最終的には私の人生でもある。オカンも同世代の親御さんよりは10歳弱若い方だし。
“興味のある事が出来る状況にあるのであればやってみる”と言うのが私の信条。

とはいえ駅の改札口で「じゃぁね」と言った後は振り返る事が出来なかったです。

「入国拒否の可能性があります」

成田空港出発ということで、当時東京に住んでいた親友が合流してくれました。
私は本当に恵まれているなぁと感じ続けた1日でした。
「見送りは要らないよ」とは言いつつも“帰国もいつか分からないのに1人で発つのかぁ”と思ったりしていたので、これは嬉しかったです。
でも、搭乗の時がさらに辛くなるわけで。

「ちょっと待ってて、チェックイン済ませてくる」
彼女にそう伝え、カウンターに向かいました。

カウンターでパスポートを見せると「お客様、出国は可能ですが、入国拒否の可能性があります」
と言われました。
「え?なぜですか?」と聞くと、
「片道航空券ですから。観光ビザですし、出国の保証がありませんから、不法滞在しかねないと言う判断をする事があります。これはその時担当する入国手続きの職員次第なので何とも言えません」

「査証はメキシコ国外で事前取得」と直前の法律変更があり、(旧法律で一般的であった)“入国後に移民局で就労査証に切り替え”ではなくなったのです。
そこで就業先の人事部長が用意した「何かあればこれを見せるように」という用紙、見せたものの全く効力無し。「弊社で雇用するので大丈夫」みたいなレターだったと思います。
「こんなので入国の規則変更に通用するの?」という不安が見事的中した瞬間でした。

「入国出来ない場合は?」と聞くと「その場で帰りの便を購入頂き帰ってきてもらいます。本国に入れないことになりますので」と。
「どうされますか?キャンセルし、取り直しされますか?」と聞かれましたが
「キャンセルしても、取り直しに掛かる費用もトントンですし、行きます」
そう答えチェックインを終えました。

とはいえ… どういうことよ!?
待っていた友達のところへ戻った時の私は、不安どころか憤りが。

まず、航空券を用意したメキシコの会社の人事部長にEメールしました。
時差があるから電話も無理だろうと。そもそもこの人事部長、滞在先の住所も最後まではっきり教えてくれないし、査証の書類も不備が多く私の方で領事館に問合せる事も多々あり、どこか不信感がありましたが…詰めが甘さが拭えなかった。くぅー。

色々と忙しい社長より、奥さんにSNSのメッセンジャー経由で状況を伝え「メキシコにとりあえず行くけれど、州までたどり着けるか分からない」と残しました。
彼女なら社長に伝えるか、仮に社長が出張中でも携帯と会社に繋がるまでかけ確認次第すぐに社長に伝えるタイプだと確信していました。

「とりあえず、言ってくるね」

どこか不安な気持ちで軽くランチを取り、とうとう搭乗です。
見送りに来た親友も「そんな状況って…」という反応。

「(戻って来るかもしれないけど)とりあえず、行ってきます」
それれもハグをして泣きながら別れました。

飛行機の中でも、家族や親友との別れに悲しみながら、でも“着いても戻る可能性もあるのか”という何処となく宙ぶらりんな気持ちのままでした。

つづく

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