メキシコで働かない?(3)・完

労働条件

「保険とか有給休暇とかは?」

「給与は大体x,xxxドル位、保険や有給休暇はメキシコの法律に合わせます。そこは追々連絡するんで待っててください。
ただあまりいいお知らせじゃないけれど… 引っ越し代と車両購入代は多分出ないと思う…」

「え、『来てほしい』って言われて今居る会社を辞めるとして、それで引っ越し代も車購入代も私負担って言うことですか?」

「はい、残念ながらそういうことです」

「現時点では、それがもう…。
一応少しは考えてみたいと思うので、メールでやりとりできますか?」

名刺をもらい、その時に彼の名前を初めて知りました。
それくらいカナダ人の彼女の横ではいつも存在感が薄かったので、本当に彼が社長とは全く思ってもいませんでした。
 
そこから彼とEメールでやりとりが続きました。
同時に現地のメキシコ人友達にこの話をし、平均的な労働条件や給与の目安を聞きました。
彼女曰く「車業界の経験がないことを考える始まりとしては良いと思うよ。メキシコでは十分に暮らせる額」とのことでした。
ただ彼女も私が「雇ってくれ」と言ったわけでは無いこの背景で、航空券代、引っ越し代(荷物郵送費)、現地での車両購入代などを負担しなければいけない事は気にしていました。

やってみます

結局回答まで2ヶ月経っていたでしょうか。
いやぁ、悩んだ。
そして悩み抜いた末にオファーを受けることにしました。
悩んだ経緯はまた別途海外転職という観点で書いていこうと思います。
 
まずは母に打ち明けました。

「あのさ、仕事辞めて、メキシコで働くことになった」

なぜか私も場所を選ばず、母をパチンコ屋さんに送って行く車の中で伝えてしまいました。
 
「え?………『 いつかは海外なんだろうなぁ』と思ったけど、メキシコか… いや、手が震える」

これまでの語学遊学と違い仕事となれば期限付きではないので、これまでのように「xx月には戻る」という言葉がありません。
今思い出しても、オカンの震える手を見ているのは辛かった瞬間です。

退職願

母に伝えた後、出勤した日に職場のマネージャーの机に筆ペンで書き上げた退職願を置いておきました。

早々呼び出され、開口一番「もしかして引き抜き?」と聞かれました。
私の職場は顧客に大手企業のVIPの方が多く、確かにたまに声を掛けられる事がありました。

「いやいや違います、転職です」

「もしよかったらどこか教えてくれる?」

「地元の上場企業です。ただ海外、メキシコ新工場なんです」

「え、海外、しかもメキシコ?
それは何も言えないわ。貴女に合ってる(笑)。この辺の地元企業だったらさぁ、引き留めようと思ったけど。
海外のしかもメキシコでしょ、何も言えないもん、気持ちよく見送らせてもらうよ。
ただ筆ペンで退職願とか、あなたそんなガラじゃないでしょう。」

「一回、ドラマみたいにやってみたかったんです」

「うちは会社指定のフォームがサイトにあるから、本来はそれだからね、退職願。誰も使ってないけど(笑)」
 
ここまで快く送ってもらえるとは、本当に嬉しかったです。
ただ「貴女に合ってるってどういうことなんだろう」って言うのは気になるけど。

その場で、最終退職日を約2ヶ月後の9月末日に決めました。
新入社員を採用し、引き継ぎもOJTできちんと教える必要があったので。

そして迎えた出勤最終日。
部長もマネージャーも先輩も後輩も同僚も、本当に気持ちよく見送ってくれました。
送別会をしてもらってプレゼントも貰って、ありがとう♪の気持ちでいっぱいでした。

怒涛の引っ越し準備が待ってるけどね。

【”メキシコで働かない?” 完】

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