タクシー
メキシコでタクシーを使うこと
2017年初頭くらいにはUberが当たり前になり、私も昔ながらのタクシーはほぼ使っていません。
Uberが来る前は、タクシーを使うのが本当に嫌でした。
メキシコシティで流しのタクシーに乗るのは当時ご法度でしたが、この街は大丈夫と聞いていたし、実際そう感じてはいました。
でもスペイン語が達者でもなく、大概メーター機が壊れているので乗る前に値段交渉が要るタクシーの利用は極力避けたかったものです。
渡墨したばかりの当時は残業や休日出勤もなく、週末は街を知ろうと街中に出ては教会や博物館巡りをしていました。
住んでいた所からは結構な距離でしたが、地図を携帯に落とし、街中までテクテク歩いていったものです。
就労許可証申請中は携帯契約が出来なかったので、携帯の写真地図を頼りに歩きました。
タクシーは500円もしないのですが、お金よりも交渉が嫌、それくらい使いたくなかった。
座ってばかりだったので”運動不足解消なんだ”と思えば歩くのも対して苦ではなかったです。
とはいえ、そんな生活も続けてられないし、郷に従う事も大事です。
ある週末テクテク歩いて米系大型スーパーWalmartへ。
食材だけなら頑張って歩いて帰れるけれど、その日は新居に鍋やタオルなど買い足したいものがたくさんありました。
Walmartでは「サービスカウンターでタクシーを呼べる」と聞いていたので、入店後にまずそのサービスが本当なのかを確認に行きました。
すると
「えぇ、買い物した後こちらに来て依頼頂ければタクシーをお呼びします」
“良かった♪”、心置きなくカートを持って買い物する事2時間。終わった頃には外も暗くなっていました。
早速サービスカウンターに出向き「タクシーを呼んで下さい」とお願いすると、すぐ対応した店員さんが電話をかけてくれました。
「はぁ、後は乗って帰るだけ」とホッとしたのも束の間…
「Señorita、タクシー空車がないみたいです。掛け直してもしばらく同じでしょうね、週末の夕方なので。店の前の通りで簡単に拾えますよ。」と。
え… 本当に呼ぶだけかい。
何かの有無を聞くと回答はくれるけど、先を読むような事はさらにまた質問しないといけない国、メキシコ。
「週末の夕方なので」って、この時間帯はいつも混むのが通常だと…私、頭まわらんし。
つまり、日本なら最初に確認した時点で「でも時間的に混合うでしょうから」とか「捕まらない場合はそれ以上の対応はいたしかねます」とか、こちらが思う一歩先を行く一声があると思うのだけど… 先を見越した言動をする(もちろん個人にもよりますが)というのは、基本的に外国の接客サービスではあまり無いようです。
流しのタクシー
「流しかぁ… メキシコシティじゃ一番ダメなやつじゃん」
メキシコで”しょうがない(Ni modo)”と言われた時はもう相手に解決の意欲なんぞ無く時間の無駄なので、日用雑貨満載のカートを持って外に出ました。
目の前といっても高速自動車道の入口でもあるWalmart前はビュンビュン車が行き交い、手をあげて止まるとも思えません。
どうしたもんだ…。
周りを見渡すと、こちらでよくある、大型スーパーの駐車場でお客が買い物中に車を洗う若僧達がせっせと洗車していました。
そのうちの一人に「タクシーこんな所で拾えるのかなぁ」と聞くと「あぁ、もう少し道路に身体出して大きく手を上げれば簡単だよ」と言います。
ふむ… しばらく手を上げて立ってみます。
… も誰も止まりやしない。
暗くて見えないのか、それとも”外国人だからかなぁ”とか、こういう時はネガティブ思考になり始めます。
さっきのお兄ちゃんに目をやると、私の目線に気づいて歩いてきました。
車を拭くタオルを掲げて大きく振ると同時にかなりの音量の口笛をふきました。
あっという間に1台到着。
マジで?
メキシコ人、この口笛技よく使います。
しかもハミングに使うような可愛いらしいもんでなくて、かなり強烈で、コンサートやこうしたタクシーを止めたり、道路の向かいに居る知合いに吹いたり。
“私も出来るようになりたい”と以前職場のアシスタントに言ったら「んー、女性はあまりするもんでない」とやんわり否定されました、そんな類の口笛です。
結局、自力ではダメだった
慌ててこのお兄ちゃんにチップをと小銭を探すと「いらないよ、Adios」といってタクシーのドアを閉めて”ドン”と運転手にGo合図のようにするとまた洗車に戻って行きました。
後ろ姿が光って見えた。
おかげで無事に家に到着出来ました。
メキシコって…「なんだよっ」と苛立った後にこの手の優しさが程よいタイミングでやってくるから嫌いになれないんだな。